まちづくり・お宝バンク

絶滅の危機を救いたい!うつくしい京都の言葉を後世に語り継ぐ「京ことばの会」(第3回市民ライター講座の記事)

掲載日: 2019年6月5日

 

言葉というものは、私たちが生活するなかで欠かせないものです。しかし、言葉が日常に強く結びついているがゆえに、普段自分が使っている言葉に改めて意識を向ける機会は少ないのではないでしょうか。気がつかないうちに、私たちが使う言葉は日々変化しています。

今ある言葉たちが形を変えてしまう前に、そのままの形のまま語り継いでいきたい。うつくしい言葉を守りたい。「京ことばの会」代表、中島さよ子さんはそんな思いを胸に活動しています。

「京ことばの会」は、京ことばが絶滅しつつあり、京都に住む若者でも京ことばを知らない・使うことができない事実に懸念を持った中島さんが起こしたプロジェクトです。小学校や児童館、福祉施設への出前講座や、修学旅行生向けの京ことば講座やラジオ番組など、幅広いターゲットに向けて京ことばを発信しています。

京ことばとは、京都に都があった時代に御所で使われていた言葉と市民が使っていた言葉が混ざり合って生まれたものです。当時、天皇や皇族は市民のあこがれの的でした。そのため御所で使われていた言葉を真似することで、市民はあこがれの存在に近づこうとしたのです。上品で美しく、丁寧な言葉が生まれた背景には京都が都であったことがあります。京都だからこそ生まれた、京都独特の言葉が京ことばなのです。

「京ことばの会」ではこのような言葉の歴史も重要視しながら活動しています。これには、京ことばを通して自分の住む土地の言葉の歴史を知ってもらうことを目的としています。京都の外からやってきた修学旅行生がこの話を聞いたときに、自分が使っている方言、その歴史に意識を向けること、そしてその地域だからこそ生まれた、方言特有のあたたかさについて考えてもらうきっかけに繋がるかもしれません。

また、中島さんたちは自分たちの「生の声」で京ことばを伝えていくことを大切にしています。言葉というものは形がないものであるため、実像が掴みづらく残していくことが難しいです。それに加えて京ことばはイントネーションが独特であるために、文章だけでは正確に伝えることができません。この二つをふまえるとやはり「生の声」を体で感じてもらうことが一番わかりやすいといえます。そのため、京ことばが身に沁みついている自分たちだからできることを意識しているそうです。

このように言葉の歴史を知ることは普段何気なく使っている言葉というものの本質を考えるきっかけになるのではないでしょうか。京都に住んでいる人も、そうではない人どちらにも、京ことばを通してそのようなきっかけを与えてくれるものだと思います。京都在住の人なら京ことばに触れることでもっと自分が住む土地への関心を持つきっかけになり、他の地域の人々も京ことばを通して自分が使う言葉の歴史に興味が湧いてくるはずです。

言葉はいつでも毎日当たり前に、私たちの生活の中にあります。そんな当たり前な、日常的な存在だからこそ、言葉に意識を向けることがあなたの日常をちょっとだけ変えてくれるかもしれません。

記事の執筆 京都精華大学人文学部学生

  • この記事は、第3回市民ライター講座に参加した京都精華大学の学生の皆さんに執筆いただいた記事です。
  • 京ことばの会の活動は、「まちづくり・お宝バンク」に登録されている取組です。

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