企業 NPO・まちづくり団体 行政にとっての 市民協働イノベーションエコシステム
NPO法人グローカル人材開発センター行元さん

~特定非営利活動法人グローカル人材開発センター 行元沙弥さん

京都市 総合企画局総合政策室 SDGs・市民協働推進担当とSlow Innovation株式会社は、市民協働イノベーションエコシステムの構築・活用をめざした連携協定を結び、「市民協働イノベーションエコシステム調査」のプロジェクトを推進している。「持続可能なまちづくりを支える生態系(エコシステム)って何なんだろう?」「どうしたら、地域の未来をつくるイノベーションが次々と生まれてくるのだろう?」という問いのもと、京都を中心に市民協働やイノベーションに取り組んでいるさまざまな組織・人財にインタビューを行なっています。

今回は、「京都の未来を支える人材」を育てる地域センターをめざす「特定非営利活動法人グローカル人材開発センター」の代表理事、行元 沙弥さんにお話を伺いました。グローカル人材開発センターは、2020年11月にオープンした「京都信用金庫 QUESTION」でも、全体の企画及び5階のStudent Labの管理運営もしています。

話し手: 行元 沙弥(Saya Yukimoto)| 特定非営利活動法人グローカル人材開発センター 代表理事
「学生と社会の接点があまりにも機械的すぎる」と日本の就活システムに疑問を原点に、グローカルの構想段階から携わり、2020年の6月より現職に就任。
グローカルセンター(略称)とは、京都の産学公民が協力して進めている「グローカル人材」育成事業のプラットフォームとなるNPO法人。若者の声が届く風通しの良い社会の実現を目指し、グローカル人材育成に関わる科目・資格・セミナー・教育手法等の開発と、その運用・コーディネート全般を担う。資格カリキュラム開発では京都の6大学(京都産業大学、京都府立大学、京都文教大学、佛教大学、龍谷大学、京都橘大学)、および京都経済5団体(京都商工会議所・京都経営者協会・一般社団法人京都経済同友会・公益社団京都工業会・京都中小企業家同友会)、京都府、京都市、一般財団法人地域公共人材開発機構と連携・協働をしている。
聞き手: 野村恭彦(Nomura Takahiko)| Slow Innovation株式会社 代表取締役
金沢工業大学(K.I.T.虎ノ門大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授。博士(工学)。「渋谷をつなげる30人」を主宰し、5年目を迎える。昨年より京都拠点を立ち上げ、「京都をつなげる30人」は2年目の開催。企業・行政・NPOのクロスセクターでの「信頼のつながり」をつくり、「地域から社会を変える」イノベーションエコシステムの構築をめざして活動している。

グローカルの成り立ち

野村: まずは、グローカルセンターの成り立ちについてお聞かせ願えますか?

行元さん: グローカルは2013年に発足しました。

私が大学3年生になる頃、周りを見渡すと就職活動を始める友人たちが、スーツを着はじめ個性が消えていってしまうように感じていました。それに対して、大きな疑問を抱き、日本のスタンダードを変えていきたい、という思いで立ち上がりました。当時、大学教育改革と企業風土改革をセットにした産官学民連携のNPO構想が進んでいて、そこに立ち上げから参加し、ワンクリックからスタートする機械的な就職についての自分の疑問を榊田さん(グローカルの前代表理事、現京都信用金庫理事長)や大学人にぶつけていきました。それが今につながります。榊田さんから「京都企業も迷っているんだ」と言っていただいた。そして、学生側も企業側も、「よりよい就職採用のありかたとは?働くとは?」という共通の問いのもと、当事者が集まって話し合う場や組織が必要だということで生まれたのが、グローカルセンターです。

そして、京都信用金庫が新たにつくったクエスチョンでも、5階のフロアをStudents Labとして企画運営させてもらえることになりました。ここでは、学生同士の繋がりはもとより、リアルなつながりの中で、当事者の声が聞こえるような場の運営をしていきたいと考えています。学生を単なる学生としてではなく、「未来をつくる人(Future Maker)」として学生を捉えるよう企業に提案しています。持続可能なまちづくりの根幹には、持続可能な人づくりが必要という信念のもと、グローカルがその役割を担っていきたいと思います。

出発点は、地元産業界と連携しながら学校の学びを実践的なものに変えていくということでした。まちづくりや企業連携など、プロジェクトベース学習を250以上、動かしてきました。就職活動以外の日常の学びの中で、学生と企業が自然に出会える場、集える場をつくることで、自然と地域への愛着が育まれ、地域に根ざしていく学生が増えています。大学の中、大学の外に、興味関心や問題意識でつながることで自然に気づき学べる「場」をつくっている感じです。

グローカルの仕事は、ローカルからグローバルまで多様なつながりがあり、そのエコシステムのなかでプロジェクトを進めています。街をフィールドにしてプロジェクトをやるのですが、学校だけが学びの場ではないということを学生に伝えることを大切にしています。

学生時代はNPOを立ち上げるというアイデアすら浮かんでいませんでした。海外留学した時に、外から見た日本、外から見た自分に対する問題意識が芽生え、それをたまたま榊田さんにぶつけてみて、気づいたらここにいたという感じです。

野村: そういう意味では、学生主体でローカルな課題解決からというところでありつつ、京都の経済界が生み出した組織でもあるという両面がいい形で合わさっている。今回、クエスチョンに入ったことで、それが加速されることがわかります。

行元さん: そうなんです。両面って言っていただきましたが、問題意識が同じだったんですね。学生側も、経済界のトップも。さらに行政の方々も含めて、問いが重なった感じです。就職活動というものが機械的だったところから、カラフルなものに変えていこうという意識でつながりました。

最高(最幸)の瞬間

野村: 行元さん自身がこの仕事を通して、「いちばん、あーー幸せだわーー」って思った瞬間はどんな時ですか?

行元さん: うちは、10人のチームです。外のエコシステムのなかに、たくさんのチームがある。なので10人という感覚はなくて、他の組織の人がグローカルのこと、学生のことを自分ごとで考えてくれる。悩んでいるところがあったりすると、戦略的なところまで一緒に考えてくれたりする。そういう時、「あー、この仕事ならではだな」と思う。NPOはトライセクターで無条件に社会性(社会にとってどんな意味があるか?)から出発できる。と思っているので、いろんな組織や業種をまたいだコラボはNPOにしかできないと考えているので、そういうことができた時、幸せだなーと感じます。

野村: グローカルセンターのめざすところを自分たちでも体現しているということですね。

行元さん: そうですね。

野村: 今回クエスチョンに入ることで、この活動を広げていくことになると思うんですが、どんなところと、どんなことができたらいいと思うかといった、ビジョンのようなものがあれば。

行元さん: ありがとうございます。

最初のグローカルの目的からなのですが、「ローカルな視点を持ってグローバルに活躍する人材」を育て、「風通しの良い社会をつくる」ことをめざしています。京都企業と有機的につながって、学生がローカルに誇りをもって活躍していくということは変わらない軸です。

NPOと他セクターとのコラボレーションは増えてきたが、GLOCALとしてNPO同士のコラボレーションがまだまだだと思います。

あとは、グローバル。場所を選ばずにコラボレーションが加速しています。今は台湾とコラボレーションが始まっています。そこと連携したような動きをもっと加速したいと思っています。

コレクティブインパクトをめざしたい

野村: NPOとのネットワークは、すでに知っているけどコラボレーションできていないのか、それとも新たに知り合いたいと思ってらっしゃるのでしょうか?

行元さん: もちろん両方ですが、まずは、すでに知っているけどコラボレーションできていないNPOと連携したい。学生をサポートしているNPOは、うちを含めて連携できると、学生から「今はこれがあっているな」と選べるオプションが増える。同じ問題意識をもっている、対象が同じ団体とはブレストしてみたいです。もちろん、これから知り合っていきたいところもたくさんあります。

野村: 他のNPOと知り合う機会としては、どういうものがありますか?

行元さん: 自分自身がアメックスの研修に出ていて、それがNPO・非営利組織の代表を対象としたものになっています。まったくちがう課題にアプローチしているNPOの話を聞いても、社会的問題って有機的につながっていると感じるところが大いにあります。自分自身で問題意識が似ている人が集まる場に行くとか、行政からの情報もたくさんあります。でも、そこを知っているだけで事業やプロジェクトに落とすことがまだぜんぜんできていないんです。一緒にできると面白いと思っています。

野村: 異なる組織が協力して成果を大きくする、「コレクティブインパクト」という考え方をすると、京都で何ができそうだと思いますか?

行元さん: 例えば、一人の学生が15歳だと仮定して、10年後の25歳の時にどんな街になっていると思うかを一緒に考えたいです。そこで描いたものを関係する組織にぶつけてみて、バックキャストで一緒に実現していくようなことができたら楽しいと思います。

野村: 15歳くらいから、というところが大事でしょうか。

行元さん: グローカルも最初は大学生から始めたのですが、いま文科省が探求学習の推進に力を入れていて、グローカルも将来大学生になる、将来会社員になる高校生につながれるのは学びだし、就職が遠い方が「学びにフォーカス」できるので可能性が大きいんです。もちろん、私も32だし、30歳をこえても学べるのですが。

野村: 京都の高校生が多いのでしょうか?それとも全国からですか?

行元さん: 青森の高校生、沖縄の高校生のプログラムもありますが、主に京都の高校が多いです。私立も公立もありますが、公立の方が緊急度が高く、伴走させてもらうことが多かったです。

次世代に向けた「グレートリセット」

野村: 地元の高校生の意見が実現していくとなると、彼らが地元に就職して、という良い循環ができそうですね。

行元さん: グローカルが設立された当初は、「これから、働き方ってどうなるんだろう?」とふわっとした感じでした。今は、働き方もアップデートされてきていて、彼らが社会に出るころには、その前提も「グレートリセット」されなければいけない。グローカルもつねに、既存の価値観や働き方をベースに話さないように気をつけています。私たちも分からないんだけど、こうなるかなとか、一緒にアップデートしたいと心がけています。

野村: 私も2012年にフューチャーセッションズを立ち上げました。震災の後に、東北で見られたクロスセクターの協力を見て、それを他の街でも見たいなと思って。そして昨年、スローイノベーションを立ち上げました。

行元さん: 亀のマーク、素敵です。

野村: ははは、ありがとうございます。2011年に大きな価値観の変化があり、そして今、コロナ禍で再び大きく価値観が変化しています。今の15歳の10年後の25歳は、2030年なので、SDGs達成の年ですよね。サステナブルではない商品やサービスは、もう市場に受け入れられなく、本当になっているかもしれない。

行元さん: ほんとうにそう思います。社会的な事象が、どれだけ人間の考え方に影響を及ぼすかと思うとすごいですね。

同じSDGsを見ても、世代や文化、立場によって認識が異なります。だからこそ、その年代の認識の違いを多面的に紡いでいくところをグローカルは担いたいと思っています。

エコシステムの発展について

野村: グローカルが社会課題解決をしたいと思ったときに、どんな幅広いエコシステムに、どんなつながりを期待されますか?

行元さん: 例えば海外では、融資するときにNPOが評価に入ったりもします。行政が、NPOをちゃんとパートナーとして認めてくれることが大事です。NPOを「社会性を測るパートナー」として認められること。アメリカではティーチフォーアメリカが、もっとも就職したい組織。日本では、そこに対する理解が進んでいない。

ここ京都で言うと、金融機関は、情報のハブになっていると思います。行政もそこにつながるといいと思いますし、さらにそこにNPO視点、学生視点を入れていきたいです。

市民がまだどう社会とつながっていいか分からない、学生もどうつながっていいか分からないと言ってグローカルに来てくれるので、最初はSDGsなどの外発的なところでもいいので、もっとNPOへの理解が広がるといい。

野村: NPOは、ノンプロフィットというより、インディペンデントセクターと呼びたい。ボランティアだけではないという認識が必要ですね。京都の市民力を可視化する上で、NPOはもっとも大事。こういうNPOは頼りになるよ、ということがマップ化されるといいと思っています。

行元さんにとってのパッションの源泉

野村: 皆さんに伺っているんですが、この仕事にパッションを燃やしている源泉みたいなものは何なのでしょうか?

行元さん: パッションの源泉は、ルーチンができなくて、誰もやってなくて難しそうなことが好き。私じゃないとできない、グローカルじゃないとできないことをやろうとすると、それは社会課題につながっている。

設立のときには、株式会社で好きなようにやったらいいじゃん、という意見もあったけど、持続可能なまちづくりにも通じる、自分たちがいなくなっても残る仕組みをつくらないといけないと思う。

「つくりたい文化や当たり前を生み出すために、むっちゃめんどくさい方法をとって、その仕組みを残そうとしている」のだと思います。

「オール京都」で取り組む人材育成の現在。グローカルをとりまくエコシステム

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