企業 NPO・まちづくり団体 行政にとっての 市民協働イノベーションエコシステム
一般社団法人RELEASE;桜井さん、風間さん

~KOIN・京都市地域企業未来力会議/一般社団法人リリース 桜井肖典さん・風間美穂さん

京都市 総合企画局総合政策室 SDGs・市民協働推進担当とSlow Innovation株式会社は、市民協働イノベーションエコシステムの構築・活用をめざした連携協定を結び、「市民協働イノベーションエコシステム調査」のプロジェクトを推進している。「持続可能なまちづくりを支える生態系(エコシステム)って何なんだろう?」「どうしたら、地域の未来をつくるイノベーションが次々と生まれてくるのだろう?」という問いのもと、京都を中心に市民協働やイノベーションに取り組んでいるさまざまな組織・人財にインタビューを行なっています。

今回は、「KOIN(Kyoto Open Innovation Network)」や「京都・地域企業応援プロジェクト」によって、地域企業が未来を切り拓くサポートをしている一般社団法人リリース(RELEASE;)の桜井 肖典さんと風間 美穂さんにお話を伺いました。

話し手: 桜井 肖典(Yukinori Sakurai)
2000年よりデザインコンサルティング会社を経営、様々な分野でデザインプロジェクトの企画監修を重ねる。2012年より持続可能性と事業性を両立する「未来が歓迎するビジネス」のデザイン組織としてRELEASE;を始動。「藝術と社会変革のあいだ」で経済活動をプロデュースする構想家として、社会の大きな物語を編み直す人文学的なアプローチと共創によるビジネスデザイン手法を軸に、大企業や自治体からスタートアップや非営利団体まで領域横断的なプランニングとディレクションを実践する。「想像力からこそ優しさが生まれる」と信じ、「希望を実現する技術であるデザイン」とともに、一人でも多くの人が希望を胸に生きている世界へ。
話し手: 風間 美穂(Miho Kazama)
映像制作・デザイン会社を経て、2007年からThink the Earthに所属。大企業や政府、NPO/NGOやクリエイターなど異なるセクターの間で、”エコロジーとエコノミーの共存”を目指し、コミュニケーションの橋渡しをするカタリストを自称する。Movie・WEB・学びのコンテンツ製作やプロデュースに携わるも、ボルネオ島で感じた地球規模の経済への問いを傍らに、2013年からRELEASE;へ本格的に合流。主に中小企業や地方自治体とのプロジェクトメイキングやマネジメント、事業プロデュースを担う。「次世代も美しく多様な地球の営みを愛でてほしい」と願い、RELEASE;では人間も自然の一部として捉えながら、ビジネスを通した好循環が生まれる仕組みをデザインしている。2014年に東京から京都へ拠点を移す。新潟県生まれ。
聞き手: 野村恭彦(Nomura Takahiko)|Slow Innovation株式会社 代表取締役
金沢工業大学(K.I.T.虎ノ門大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授。博士(工学)。「渋谷をつなげる30人」を主宰し、5年目を迎える。昨年より京都拠点を立ち上げ、「京都をつなげる30人」は2年目の開催。企業・行政・NPOのクロスセクターでの「信頼のつながり」をつくり、「地域から社会を変える」イノベーションエコシステムの構築をめざして活動している。

今回は、RELEASE;の桜井さんと風間さんに、市から運営を委託されている「京都・地域企業応援プロジェクト」のプログラムの一つである京都市地域企業未来力会議(以下、地域企業未来力会議)と、京都経済センターの3階にあり、一般社団法人京都知恵産業創造の森が運営・管理するオープンイノベーションカフェKOIN(Kyoto Open Innovation Network)についてのインタビューをさせていただきました。市民協働とイノベーションの観点から、社会課題解決のためにリリースがつくっているエコシステムについてお話を伺いました。

リリース、そしてKOIN、京都市地域企業未来力会議の始まり

野村: 一般社団法人リリース、そしてKOIN、地域企業未来力会議についての概略をお願いします。

桜井さん: 2012年5月から、社会的企業が取り組みたいけど取り組めてない領域に関して、100日間かけてビジネスアイデアを練るプログラムを京都市さんに協力いただいていてやり始めたのが我々の起こりです。京都市内の大学生と社会的な企業のIKEUCHI ORGANICさんやパタゴニアさん、坂ノ途中さんといった、「これからの1000年を紡ぐ企業認定」に関わるような企業さんに参加いただきました。そして初年度には、IKEUCHI ORGANICさんの京都出店が決まりました。

同時に、京都市では(当時の)産業観光局の商業振興課の方々がソーシャルイノベーションを政策として打ち出す動きがあり、我々のプログラムにも市長が出席されたり、パタゴニアの日本支社長さんと話したりすることで、ソーシャルイノベーションの機運が高まっていったんですね。ここまでがリリースの起こりと、その頃の話ですね。

うちの会社は社会のために仕事したい人がのべ30数人集まって、会計やコピーライター、プロジェクトコーディネーターなどの方々が一緒になってビジネスに伴走していく組織です。

会社のフォーカスは事業性と社会性を両立どうさせるかというところです。ソーシャルって言葉をあえて使わないようにしています。しっかりとビジネスに伴走する会社にしながら、我々の収益も、森に木を植えたりといったことに使っています。みんなの稼いだことも未来のために使われるようにと。

その後、京都市が立ち上げた「京都・地域企業応援プロジェクト」のプログラムの一部を受託運営し始めたり、それらの実績をふまえ、京都経済センターの中に設置されたオープンイノベーションカフェの企画として、KOINを提案・プロデュースしたりすることになりました。KOINのスタッフは様々な組織や企業から出向できていて、そこにもビジネスのエコシステムが築かれています。

総括すると京都で活動する中で、地域企業さんや実業家さんの経営伴走しながら、ビジネスをとことん突き詰めて考えていったら、自然と社会性が生まれることを知ったんですね。なのでその経験を生かして、生態系を作っていっています。

野村: 地域企業未来力会議のお話も聞かせていただいていいですか?

風間さん: 若手経営者が業種横断的に議論し、課題解決に向けて行動する場として、2016年に未来力会議が発足したと聞いています。最初は私たちとは別の方々が会議運営をされていましたが、そこでは参加企業さんの共通課題が抽出されていき、また皆さんの地域や未来への想いが会議のテーブル上に並んでいきました。

しかし、行政としては課題や声をカタチにして支援していかないといけない。それをどうしたらいいか、ということで私たちは、「やりたいことを持ってる企業さんがアイデアを発表できる機会」と「リソースを持ってる人たちが集まって連携しやすい仕組み」を立ち上げました。たとえ会議内ではリソースが見つからなくても、元々やりたいと思っているアイデアなので、企業さんは連携を育み、ビジネスとして実行されるんですね。

現在では、「地域企業未来力会議」でアイデアを発表することにより、行政や支援機関をはじめ多くの地域企業からフィードバックや協力が得られるという点で、様々な分野から参加事業者が集まっています。

一つひとつの会社が輝くことで社会課題が解決されていく感動

野村: 活動を通して一番個人的に嬉しかったことお伺いしてもいいですか?

桜井さん: 具体的にビジネスが進むことですね。

例えば、中島農園さんっていう、農家さんがいらっしゃるんですが、飲食店が直結して自社農場をもてば、地元の野菜を地元で食べられて地域の観光にもつながるんじゃないかっていうアイデアを発表されたことがあったんです。地産地消で観光にも、ということです。

そしてそこで出会った方々と話す中で、配達をしながら飲食店さんの出した生ゴミを回収する、というフードロス解消の仕組みにも発展していったんですね。今では加盟店が増えていて、仕組みが広がっています。

おそらく「ソーシャルイノベーション!」って言ってたらこういう事業はできてこないんです。だけど、時代にあう、人にあう言葉遣いをして人と出会っていくと本当に社会的企業になっていく。そういうのが嬉しいですね。

野村: 風間さんの場合はいかがですか?

風間さん: 私は自分のバックグラウンドとして、自然資本とかサステナビリティの観点で、良いものを広げていこうというのがミッションなんですね。

そして、例えば林業を何とかしよう、と社会課題解決の目線から議論するだけではなく、ただ自分の住んでいる地域の森をよくしたいという方と出会えた。未来力会議の中で、そういう住んでいるとこをよくしたいということを素直に思ってビジネスにしていく会社さんに出会えたことがすごく良かった。

例えば、リトゥリバースさんという間伐材からでも糸をつくれることを教えてくれた会社さんは、森を守る活動とビジネスの両立にチャレンジしている。繊維化したものを商品にするところがなかったから自分たちで起業された。

他には、パースペクティブの堤さんは漆を原材料として提供するお仕事をされていて、「自分たちの仕事を通して未来にとっても大事なことをやろう」と声かけされていた。本当にこういうサステナビリティに直結してる方々が会議にこられることが素晴らしい。

もうひとつ、未来のステークホルダーである「子どもたちへ向けたプロジェクト」のアイデアも、未来力会議ではたくさん発表されます。西京区の鈴木モータースさんは、最初ご自身のアイデアに自信が持てなそうでしたが、子どもたちへの想いは強い方でした。西京区では地域活動をしてきたけど、ボランティアでは続かないから、子どもたちや女性のためのビジネスを作っていきたいと。

こういったアイデアを小さくカタチにする段階で、皆さんの願いは素晴らしいと、それはビジネスという経済的価値だけじゃなく文化的な価値をしっかりつなげられている活動だ、と共感を見える化できたことは嬉しかったですね。

桜井さん: あ、加えてもう1つあります。地域企業という名前、これは会議に参加してる経営者さんからの発案なんですよね。

職人さんや後継者がいない問題についての話で、「そりゃ大中小ってカテゴライズされたら、小規模なところに人は来ない」って経営者の方が。そこでなんと呼べばいいか問うたら「地域企業」って言葉が生まれたんです。そしたら神奈川や長野県にまでその言葉が広まっていったんですね。こうやって参加者の声から会議が進み、宣言にまとまり、日本に広まったのはすごく嬉しい。

野村: 皆さんのスタンスが、一つひとつの会社がかがやくことで結果的に地域の課題が解決していくというもので、そのビジョンはすごく明快だなと思いました。

領域も年代もバラバラな人々が経済により結びつけられる

野村: 今までに別々に動いていたイノベーションのためのエコシステムが、どういう風につながっていったらいいか、ご意見はありますか?

桜井さん: 一点象徴的な話をすると東アジア文化都市が2017年に京都で開催された時のことなんですが、そこでの市民連携事業をリリースが担当したんですね。

そこで経済のことを文化の文脈で語るときに、今まで出会ってきた企業などの方々とは逆に、芸術家などの文化フィールドの方も同時に並んだタブロイド誌を作ったんですね。また、それをきっかけに芸術家の方々に未来力会議にもきていただいた。

ビジネスと芸術など違う領域の方々をくっつけられるのが経済活動の凄さ。それができたことがいいことだった。

KOINでのプロデュース活動においても、文化フィールドの方や大学の方にも参加してもらっていて、いろんな舞台の方を巻き込むことを意識しています。領域と年代がバラバラになることや、年代ごとのハブになっている方々が混ざるようにしています。

京都は狭い範囲にいろんな領域のプレイヤーがいて、年代ごとにも若い世代から年配の方まで現役で活躍されているので、そういった方々がちゃんと混ざることが必要だと思います。

次の100年、1000年を見据えて活動していく。

野村: お二人のパッションの源泉がどこにあるのですか?

桜井さん: 源泉は子どもですね。今5年生の子どもがいるんですけど。野生動物が40年前から68%減ってる時代で、世界の動物がそんだけいなくなっていて、僕らがちゃんと大切にしようと思わないと受け継げないものがいっぱいある。それを子どもに渡せないのは生きてて残念だからそれをちゃんと子どもに渡したいですね。

風間さん: ちがう組織やちがう目的の人たちが協力しにくい社会だな、とずっと思ってきていて、私たちはリリースで特に大事にしたいことは、ビジネスだとみんなが自分ごとにできたりとか、文化もそうだと思うが、それも一つの手段として、よりサステナブルな社会に早く到達しなければならない。

京都のような1000年続く街が、次の1000年に向けて、異なるセクターの人たちでも一緒に協力できるような小さなサブシステムを作っていけたらと思う。ただ、そのプロフェッショナルが少ない。そういう人たちがもっと連携すれば変化が加速すると思う。京都は小さいからそれが見せられると思う。森や地下水など、お金で買えない価値について、お金を扱う人たちとルールをつくっていきたいなと思ってます。

野村: ありがとうございます。お二人はブレることなく一貫して活動されていて大変素敵だなと思いました。

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