企業 NPO・まちづくり団体 行政にとっての 市民協働イノベーションエコシステム
NPO法人きょうとNPOセンター平尾さん

~京都市市民活動総合センター/NPO法人きょうとNPOセンター 平尾剛之さん

京都市 総合企画局総合政策室 SDGs・市民協働推進担当とSlow Innovation株式会社は、市民協働イノベーションエコシステムの構築・活用をめざした連携協定を結び、「市民協働イノベーションエコシステム調査」のプロジェクトを推進している。「持続可能なまちづくりを支える生態系(エコシステム)って何なんだろう?」「どうしたら、地域の未来をつくるイノベーションが次々と生まれてくるのだろう?」という問いのもと、京都を中心に市民協働やイノベーションに取り組んでいるさまざまな組織・人財にインタビューを行なっています。

今回は、各区のいきいき市民活動センターのハブとなる「京都市市民活動総合センター」の指定管理を行っている「特定非営利活動法人きょうとNPOセンター」の常務理事の平尾 剛之さんにお話を伺いました。

話し手: 平尾 剛之(Takayuki Hirao)
特定非営利活動法人きょうとNPOセンター常務理事・統括責任者。1966年京都市生まれ。龍谷大学大学院経済学研究科修了。公益財団法人京都新聞社会福祉事業団勤務を経て、浄土宗宗祖法然上人800年大遠忌記念事業「共生(ともいき)・地域文化大賞」事務局を手掛けることを契機に、2017年、きょうとNPOセンターに入職。宗派を超えた寺院とのパートナーシップやソーシャルキャピタルとしての寺院の社会資源化にむけた取組みを浄土宗と協働で実施(2007~2011)。現在、非営利組織を対象とした全国評価機関を設立し組織評価・診断及び組織基盤強化支援等を専門領域としてコンサルテーションや講演活動、その他、社会福祉就労基盤の強化にむけたセカンドキャリア・ダブルワーク等の研究活動も行っている
聞き手: 野村恭彦(Nomura Takahiko)|Slow Innovation株式会社 代表取締役
金沢工業大学(K.I.T.虎ノ門大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授。博士(工学)。「渋谷をつなげる30人」を主宰し、5年目を迎える。昨年より京都拠点を立ち上げ、「京都をつなげる30人」は2年目の開催。企業・行政・NPOのクロスセクターでの「信頼のつながり」をつくり、「地域から社会を変える」イノベーションエコシステムの構築をめざして活動している。

今回は、京都市市民活動総合センター(以下市民活動総合センター)と、そのセンターを運営しているきょうとNPOセンター(以下NPOセンター)という組織についてのインタビュー。市民協働エコシステムの観点から、公共サービスのあり方や民間からの行政との関わり方などに関して深いお話を伺いました。

市民活動総合センター及びNPOセンター、平尾さんについて

野村: まずは市民活動総合センターと、きょうとNPOセンター、そして平尾さんの簡単な紹介を頂いてもいいでしょうか?

平尾さん: NPOセンターは任意団体からNPOになってかれこれ21年目、京都のいわゆる「中間支援組織の老舗」として活動をしています。

京都の中間支援組織は独特で、大阪などは震災をきっかけに複数の中間支援組織が誕生しましたが、京都は、多様な人との地域の関係性の中で協議し、ひとつにまとまって誕生しています。それら、その人とまち、地域性および多様な分野の人がまたがって担うことがスタートとなっています。

市民活動総合センターは、「市民による自主的なまちづくりを促進することにより、豊かで活力ある地域社会の形成に資するため、市民公益活動の支援を目的に設置」されたセンターです。その運営を15年間NPOセンターが担っています。キーワードは、市民協働エコシステムになぞらえると、「公設市民営」というのが運営のコンセプト。

市民活動総合センターは条例指定施設なのですが、条例そのものは15年経っても大きく変化していない。だから条例は変わらない中で、社会状況の変化に合わせて解釈を変えていき、実態にあった運営を手掛けています。

15年以上前のNPO法人を取り巻く状況は、法人を産めよ増やせよの状態でした。当初、内閣府が目標とした件数は25,000団体程度ですが、現在は51,000団体存在している。想定件数より今は倍になっているのですね。現状においては、NPO法人は増加傾向になく、NPO法人は認証数より解散数の方が多いぐらいです。

だからこそ「公設市民営」としての戦略も変えていかなければならないということで、現在は、NPO活動をしているプレイヤーの支援だけではなく、活動実態が維持できないNPOをいかに適切に解散させるか、新しいNPOを育むか、NPOへの理解者と応援者を増やすか、という点を重視しています。これが大きな戦略の転換ですね。

野村: 平尾さんご自身についてもよろしいでしょうか。

平尾さん: 私自身は大学卒業から前職を経て、浄土宗宗祖法然上人800年大遠忌記念事業「共生(ともいき)・地域文化大賞」事務局を手掛けることを契機に、NPOセンターに入職しました。ただ、その後、NPOセンターの大きな戦略の中で、一度NPOセンターを抜けて、非営利組織の評価を担う一般財団法人 社会的認証開発推進機構を設立しました。同推進機構のメイン機能は日本財団の支援を受けて、新たに一般財団法人 非営利組織評価センターを派生して設立しました。

もともと組織評価が私の専門性なんですね。組織のガバナンス及びマネジメント、サービスを生み出すプロセス評価などを主な研究・活動対象にしています。

そのため、加えて京都介護・福祉サービス第三者評価支援機構の理事で幹事長を務めたりしています。また災害時のNPOのネットワーク団体「災害時連携NPO等ネットワーク」の副会長なども担っています。

野村: なるほど、多様な活動をされながら、一本筋の通った活動をされているなとお見受けしました。

色々な活動をされてきて平尾さん自身が、一番これが嬉しかったなって活動についてお伺いしてもいいでしょうか。

平尾さん: NPOセンターは自分で進んで選択したところなので、どんな仕事も楽しみますし、どうやって活動の楽しみを周りに伝えられるかも考えて活動しています。

ただ自分はもともと学校の先生になりたかったんですね。学校の先生にはならなかったんですけど、今は年齢を問わずたくさんの人の前で講演活動などもさせていただき、その講演時での反応を見ながら、自分も一緒に成長できる。これが生涯の楽しみです。

そういう意味では、常に大切なことを考えて大切なことを伝えていく、という伝道師の作業をしていきたいです。今の環境で学びながら、情報知識をしっかり発信していくことが刺激であり喜びですね。

公・共・サービス: 社会全体が「共に」創っていく大切さ

野村: これから市民活動の未来がどのようになっていけばいいか、お話伺えませんか。

平尾さん: これからは市民活動をどう理解しどう支援する環境を作るかどうかが重要ですね。公益的なサービスを行政と違う形で提供することということを社会に理解してもらうことが重要です。。

これはうちの師匠(富野暉一郎氏)の言葉ですが、「公共サービス」は「公」と「共」で別れてる。「公」は民間にはできない領域ですが、「共」は「共に」することから民間も共に作っていくということを表します。

行政だけでいいじゃんと思うかもしれないですが、「公共サービス」に民間が入ることは、大変重要な意義があり、これからは永遠になくならないのではないかと思うんですよね。税金でカバーできない財源の部分を民間が確保する動きが必要だし、公が求める結果(公平と平等)と民間が求める結果(ピンポイントの成果)は違えども、その結果どちらも達成して初めて公益的になる。貧困問題を解決するって言った時に、行政と民間ではアプローチにも違いがあり、その成果目標にも違いがありますよね。

だからこそ、それぞれの民間組織が持っているテーマ、レゾンデートル(存在意義)を生かして活動することがより豊かな世界を創造することになります。

野村: なるほど、これからは「公共」の「共」が社会全体で強化されることが大切で、公共サービスを全員で「共に」作っていきたい、っていうイメージでしょうか。

平尾さん: はい、行政が自分たちで設定した成果を達成するためにNPOに委託すると、NPOが下請けになってしまうんですね。そしたらNPOの良さは反映されずただの業者になる。逆に言えば、NPOが設定した成果に対して行政が支援するととNPOの専門性が生かされ、これが「共」の領域で行うべきことです。

お金と信頼性と権限があることが行政の強みです。このうちの信頼性と権限を民間とも協働関係の中でシェアすることで、民間が資金も調達しながら活動していける。だから行政は資金だけではなく、行政の強みを生かした多様な協働のあり方を模索する必要があるのです。

野村: 社会に必要なことをやる、NPOのような人たちがどうしたら社会の中でその役割を果たすか、行政のような他のセクターの人たちも自分ごとで考えて、全体を一緒に作っていくってことがなければ、不可能だっていうことですよね。ありがとうございます。

すでにきょうとNPOセンターだけで解決できる社会課題はない段階にある

野村: エコシステムを作っていく上でこれからどことどういうつながり方をしたいか、ありますか。

平尾さん: 行政とはうまく付き合っていく必要があります。ただ、行政と民間団体の関係性というものは、その民間団体の知力・体力が一定度着く前に行政と関わることはあまりよくないんですね。行政の論理に振り回されないための注意が必要です。

下請けにもならずに、また、行政へのプレッシャー団体とならないためには民間団体側が知力・体力をつけるにつれて行政との関わりを増やしていかないといけない。そのためにも信頼されながら頼りにされながら共存するというあり方を維持し続けたいです。

また、これからのエコシステムについてですが、きょうとNPOセンター単体でできることは社会課題を解決する上ではもうないんですね。

例えば、NPOセンターでは、中小企業の人の余力を対人援助の福祉現場で生かすという「福(副)業推進」に取り組んでいます。しかし、それを実装しようとすると、ファンドの支援が必要で、今はトヨタ財団の助成を得て取り組んでいますし、他にも経営側として、京都中小企業家同友会、京都府 社会福祉法人経営者協議会、京都府 社会福祉協議会など多様な民間からのバックアップを得ることが必要でした。

ひとつの問題にしっかり取り組もうと思うと、それなりの専門性とか伝統のある団体とつながらないと一歩も進まないんですよね。こういうのをいわゆるマルチステークホルダー型と言います。行政には信頼性と権限で支えていただき、その他のステークホルダーとお互いの特性やスペックに合わせて関係性を築いていくことが大切です。

野村: 単体で解決できるものはなく、そのテーマごとに適切なところと組むということですね、よくわかりました。

緩やかで利他的な感覚が自分に合う

野村: ここまでお話を伺って、ほんとうに熱い思いを持って活動されているなと感じました。そのようなパッションの源泉はどういうところからくるのでしょうか?

平尾さん: 好きで選んだ活動領域だからこそ、「好きで選んだんだ」って自分に言い聞かせてますね。また、このセクターならではのソーシャルキャピタル(社会関係資本)といった考え方や、そういう緩やかで利他的な感覚っていうのが自分に合うんですね。そういう人と人の温かさ、思いというものが原動力になってます。

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