京都市の考え方

京都市ソーシャルイノベーション研究所 (SILK) 前田さん

SILK前田さん

~京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK) 前田展広さん

京都市 総合企画局総合政策室 SDGs・市民協働推進担当とSlow Innovation株式会社は、市民協働イノベーションエコシステムの構築・活用をめざした連携協定を結び、「市民協働イノベーションエコシステム調査」のプロジェクトを推進している。「持続可能なまちづくりを支える生態系(エコシステム)って何なんだろう?」「どうしたら、地域の未来をつくるイノベーションが次々と生まれてくるのだろう?」という問いのもと、京都を中心に市民協働やイノベーションに取り組んでいるさまざまな組織・人財にインタビューを行なっています。

今回は、市民、企業、NPO、大学などの多種多様な組織や個人が京都で社会的課題の解決に挑戦する、「京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)」の前田展広さんにお話を伺いました。

話し手: 前田 展広(Maeda Nobuhiro)
1977年京都市生まれ。 京都産業大学卒業後、デザイン教育機関での産学連携や全国の校舎運営マネジメント業務を経験の後、地域企業にてCSR室を設立し室長に就任。持続可能な社会をテーマにしたプロジェクト型組織を展開する。2015年から個人事務所を設立。京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)ほか、複数の組織に所属するとともに、社会課題の解決や、新たな社会課題をうまない事業の共創的生態系を広げている。
聞き手: 野村恭彦(Nomura Takahiko)|Slow Innovation株式会社 代表取締役
金沢工業大学(K.I.T.虎ノ門大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授。博士(工学)。「渋谷をつなげる30人」を主宰し、5年目を迎える。昨年より京都拠点を立ち上げ、「京都をつなげる30人」は2年目の開催。企業・行政・NPOのクロスセクターでの「信頼のつながり」をつくり、「地域から社会を変える」イノベーションエコシステムの構築をめざして活動している。

「とにかく目の前の人が活躍したらいいなーって思ってるんです」

野村: ではまず、前田さんの自己紹介からお願いしてもよろしいですか?

前田さん: 自己紹介からでいくと、実は誰にも言ってない個人事業主としてのホームページがありまして・・・・・・(笑)これ飛んでるんです。(http://maedanobuhiro.com/

野村: どうやって飛んでるんですか?これ。随分危なそうな感じですけど。

前田さん: 下がトランポリンなんです(笑)

野村: トランポリンなんですね!なるほど。

前田さん: 何の話だっけ?あ、自己紹介でしたね。なぜか総務省「地域人材ネット<地域力創造アドバイザー>」)に掲載いただきました。京都だと、「U35-KYOTO」の企画とコーディネートを担当させてもらってたり。京都市消費生活相談センターのエシカル教育の事業や東アジア文化都市との共同企画事業のプロデュース。京都市ソーシャルプロダクトMAPとか、昔にNPOセンターの情報誌「hotpot」もやってました。

野村: ありがとうございます。今回お聞きしたいなと思ってるのは、京都にまつわる組織がどんなふうにつながり合ってるんだろう?ってことなんです。いまのお話だけでも、前田さんご自身がハブなんだなってことがよくわかりました。続いて、SILKについてのお話をお聞きしてもいいですか?前田さん個人としてって視点になっても大丈夫です。

前田さん: 僕の思っていることはすごくシンプルで、とにかくいろんな人が自分を発揮していったらいいなってことだけなんです。地域で活動されている方や、企業の中でイノベーティブな活動されている方とか、それぞれの環境や状況の中で、しがらみとか難しい前提条件を抱えていたりするじゃないですか。そういった小さく実験しようとされている方たちと伴走して、一緒に企画考えて一緒にやって・・・・・・みたいなプロデュースとプロジェクトマネジメントのようなことをいろいろなところでさせてもらっています。

SILKに関しては、基本計画の「京都市ソーシャルイノベーションクラスター構想」っていうのがありまして。要はクラスター化していくってことを自ら実行していく組織ではなく、下支えしていく組織です。クラスターが自然と生まれる状況ができていければいいので、ゆくゆくはSILKの役割は無くなっていくのが前提になっています。

これ、ちょうどいま記事でまとめているところなんですけど、SILKって「支援メニューを持たない産業支援機関」なんです。「支援機関として提供できることは~~です」ってあらかじめ打ち出していたり、「◯◯なニーズを持つ人が来たらこう支援しよう」とかはっきりとした支援メニューをあえて持たずに、一人ひとり発揮できる状況を作りつつ外の力を活かしながらいろんな物事を形成していくみたいな感じでやっています。なのでSILKの望んでることも僕の望んでることも近くて、イノベーティブなことをしようとする主体が増えていくことを目指して運営しています。

ソーシャルプロダクトマップって2015年に僕が友達づくりの意味合いも込めてやったやつなんですけど、250くらいのいろんなプレーヤーに会っていって、どういうニーズがあるか?どういう状況があるのか?をヒアリングさせてもらっていました。

「ソーシャルビジネス」って言葉を今ではよく聞きますけど、2015年の頃はチラッと知られていたくらいで。ましてや「ソーシャルイノベーション」なんて誰も言ってなかったんです。でもそれがだんだんと一般的になってきて、社会的な事業とかソーシャルビジネスみたいなことへの学生の注目も高くなってきて。世の中もだいぶ進んだなぁっていう気持ちがしています。

僕としては、別に策略的に思ってることとかなくて、とにかく目の前の人が活躍したらいいなーって思ってるんです。うまく質問に対する答えになってるかわからないんですけど……。

ただ思うのは、リーダーと呼ばれるような強い人や声の大きい人が活躍してた時代から、多様性って言ったらベタなんですけど、これからは今までリーダーと呼ばれなかったような人たちが活躍がしていくことが期待されているんじゃないかなって気がするんです。でもどういうプロセスを踏めばいいのかまだ見えないし、企業の中でもそういう人たちってまだまだそんなに評価されてないと思うんですね。

その状況が変わっていくには、「それいいですよね」って言ってくれる役割の人や、そういう人たちが活躍しやすい環境を作ってくれる人が必要で。他にも、顧客の最前線でいろんな情報とか顧客体験を創造し続ける人も大切やし、掃除のおばちゃんも必要やし・・・・・・。いろんなことが大事かなと思ってるんですけど。うまく言えなくてすみません(笑)

野村: ありがとうございます。前田さんやSILKの考えていることが一人の強いリーダーシップというよりは、一人ひとりのその人らしいしなやかなリーダーシップみたいなものを引き出していって、それに寄り添いながら実現をサポートしていくスタンスについて熱いものを感じさせていただきました。

その中で今回SILKのことに絞った時に、例えばこういう名もなきリーダーみたいな人が生まれて良いことができたみたいな具体的みたいなものを聞かせていただければなんとなくイメージが湧くんじゃないかなと思ったんですけど、いかがですか?

成功事例とかって意味じゃなくて、「名もなき方々が花開いて嬉しかった」みたいな話が聞けたらなと思ったんですけど、もし良い例があれば教えてもらえませんか?

前田さん: 名もなきリーダーの人が花開いて何かを始めていくっていうこともあるかもしれないですけど、どちらかというとそういう人たちがお互い肯定や共感をし合いながらやっていくようなプロジェクトが多いですね。

そういったプロジェクトに伴走していく中で感じるのは、関わりのベースに肯定や共感があるからなのか、強烈なリーダーシップで誰かが引っ張っていくようなプロジェクトよりとは違った広がり方をしていくような感覚があります。いろんな人たちが互いに並列で活かしあいながらやってくからなのか、じわーっと広がっていったり、なんかずーっと続いてくる感じというか、全然違う広がり方だなって感覚がありますね。

SILKから生まれてくるもの

前田さん: 具体的な事例ってことで言うと、my turn(マイターン)っていう団体ができたんですけど、これはもともとSILKのメンバーだった人が創業した団体です。バックオフィスを担ってくれてたメンバーだったんですけど、お母さんたちの活躍の場をつくろうっていうことから一般社団法人を立ち上げました。大学の先生の秘書業務とか企業さんのバックオフィス業務みたいなことを在宅でできたりとかする事業をやってたり、西京区のまちづくりの事業を受託して地元のお母さんたちといろいろ創発させていくみたいなことをされていたり。

この団体とかって、すごいリーダーシップのある集団ではないと思うんですよ。どちらかというと共感であったり、いろんな人を活躍させようみたいなエネルギーのほうが強い気がしてて。こういう活動が京都から生まれてきてるっていうのは面白いなと思っています。

野村: こういうチームはSILKの中から生まれてくるんですか?

前田さん: そうですね。SILKのメンバーにはいろんな人がいてるんです。税理士さんとか中小企業診断士さん、まちづくりアドバイザーの人に、研究職よりの方もいます。

そのメンバー一人ひとりがマイプロジェクトをやってるんですよ。僕自身も、SILKではプロデューサーとかプロジェクトマネジメントをしてるんですけど、SILK以外にもRELEASE;(リリース)の活動や個人事業も並行してやっています。

いまお話したmy turnをやっている杉原さんが元バックオフィスメンバーで。あと、いまSILKでコーディネーターをしている税理士の田中さんは「SOU-MU Project」っていうことをされていて。バックオフィス人材の活用についてのプロジェクトです。「SOU-MU NIGHT」って言って総務の人材が集まって、総務あるあるを共有したりするんですけど、結構盛り上がってるんですよね。スタートアップの企業さんのバックオフィスの仕事って、なかなか手が回らなかったりするじゃないですか。そういう企業さんとバックオフィス人材を繋げていって、副業を創っていくみたいなことをされてますね。

支援メニューを持たない支援機関?

野村: ちなみに、基本的な質問になっちゃうんですけど、こういうプロジェクトを立ち上げたりするメンバーの方っていうのは、SILKの職員さんなんですか?どういう関わりなんですか?

前田さん: SILKの構成メンバーには「コンシェルジュ」と「コーディネーター」と呼んでいる役割の人たちがいます。コンシェルジュはいわゆる事務局を担っている人たちですね。

コーディネーターは税理士さんや中小企業診断士さんなどの専門職の人たちがコーディネーターとしても関わってくれています。従来の専門職の方たちのされる支援って、法律だけの支援だけになりがちな面があって。法律的な今まで当たり前とされてきたことだけじゃなくて、もっと社会的な意義を感じられる事業者さんをサポートしたりとか社会的な価値創造に関わりたいみたいなことから新しい支援を模索されてたりする専門職の方がSILKに関わってくださっているって感じですかね・・・・・・・。SILKのしていることを説明するのはとても難しいんですが(笑)

野村: ありがとうございます。あえて簡潔にまとめてみると、SILKという組織は型にはめたサービスを提供するのではなく、専門家がチームをつくって幅広くいろんな人たちを応援していく有機的な組織みたいな感じですかね?

前田さん: そうですね。SILKでは支援メニューも持たないようにしているんです。例えば京都市の「これからの1000年を紡ぐ企業認定」というものがあるんですけど、こういう取り組みでは認定された企業がどういう支援を受けられるのかって支援メニューが決まっているのが通常だと思うんですけど、ここでは支援メニューが決まってないんです。

支援パートナーの企業が数十社あるんですが、支援パートナー会議っていうのがあります。認定企業さんの叶えたい未来をみんなで加速させる支援をしようっていうことが決まってるだけで、あとはできることをみんなでやっていくみたいな感じなんですね。

どんなことが実際行われたかというと、例えば京都中央信用金庫さんだったら中信ビジネスフェアっていうイベントへの出展の場を無償で提供されたりとか、京都移住計画さんが京都市の移住促進イベントをされるときに認定企業さんを絡めてイベントされたりとか。そういう動きがたくさん生まれていくんですよね。

その中でSILKがやっているのは、社会に対して主体的に動いていく人を増やすために支援パートナー制度を作って、一歩踏み出そうとする人たち同士が仲間になっていくのを促進するしかけづくりをしたり、多様な支援が生まれるようにその都度関わってくださる人たちに働きかけていくってようなことをしてましたね。

どんな未来を描いていますか?

野村: SILKとして、こんなふうになっていったらいいなっていう方向性みたいなものはあるでしょうか?前田さん個人としてでもいいんですけど教えていただけますか?

前田さん: 今は京都のソーシャルイノベーションがオープンリソース化できたらいいなと思ってて。

最近は「SILKの研究」っていう企画を作って、SILKの周りにいる事業者さんたちがそれぞれやってらっしゃるテーマや見識を、SILKの研究員になっていただいてコラムを書いてもらうことを始めています。その企画を通して、京都から生まれている新しい社会の仕組みみたいなものをどんどん発信していけたらなと思っています。

他には、Community based Companies MAPを作れたらなと考えています。これまでに作ったソーシャルプロダクトマップも、事業者が見るだけじゃなくて掲載させてもらった店舗に置くことでそれぞれのお客さん同士の誘客のし合いが起こったり、観光客がマップを持ってうろうろし始めるみたいな状況が生まれたり、大学の授業で活用されるなんてこともありました。

同志社中学なんか学校に貼り出してくれたりなんかして。いろんなところがソーシャルイノベーション的な方向性に向けて、情報のリソースとして使ってもらえるようなマップを作れたらといいなと。

野村: ありがとうございます。前田さんのお話を聞いていて感じたのは、ソーシャルイノベーションが起きる状況をつくっていこう!っていう思いもあるとは思うんですけど、それ以上に「多くの人がソーシャルイノベーションに関わっていく」状況を作るっていうことをすごく大事にされてるのかなって思いました。

1つのソーシャルイノベーションで世の中よくしてやろうというよりは、ソーシャルイノベーションに関わる人がどんどん増えていくことで、まちの価値観の前提が自然にゆっくりと変わっていくみたいなそんなことをイメージされてるのかなと思ったんですけど、そういう解釈でも大丈夫ですか?

前田さん: 自らイノベーションを起こしていけるプレーヤーを増やすということも大事だと思うんですけど、そういう人たちだけじゃダメだなって思うんです。プレーヤーを応援する人とか具体的に手を動かしてくれる人、環境を整えてくれる人も必要やし、資金提供も必要かもしれない。イノベーションが起きるためにはいろいろ物事が必要じゃないですか。そういう物事を全方位で増やしていくというか、増幅していくような設計というか、増幅がなされていくためにはどうしたらいいのかみたいなのはすごく考えるようにしていますね。・・・・・・もともと質問って何でしたっけ?(笑)

野村: 大丈夫です。前田さんが一番目指してる状態というか、そういうプレーヤーであったり、サポーターであったりさまざまな役割が増えていくと、京都はどんなふうになっていくんだと前田さんからは見えていますか?

前田さん: そんなことは僕は見えていませんよ(笑)。

野村: なんて言ったらいいかな・・・・・・逆に言うと、そういうイノベーションが起きるため必要ないろいろな物事が自然と増幅されていくような設計のようなものがあると、何が一番良くなるんでしょう?例えば、今ある既存の経済みたいなものが置き換わっていくと思われますか?

前田さん: あ、なるほど。そういうことですね。そう思ってます。

ソーシャルイノベーションやソーシャルビジネスの文脈の中では「社会課題の解決」ってよく言われるじゃないですか。SILKの中で「課題の解決だけじゃなくて、そもそも課題を生まないってことが大事だよね」って話を以前していたんです。課題解決って言っている時点で、課題を探す作業になっちゃってるよねって話も出てきて。解決するだけじゃなくて、そもそも課題を生まないことが大事だよねと。

よく言う話ですけど、高度経済成長期の「たくさん物を作って利便性・快適性を追求していく」っていう物質的な豊かさを追い求める時代から、また価値観が変わってきてるじゃないですか。

いまの世の中は社会課題を無視できない状況があって、これからの暮らしとか経済活動の中ではいかに社会課題を生まずに営んでいくかっていうことを、たぶん全方位で全員が捉えた方がいいんだろうと思っているんですよね。

これからの時代はそれが普通になるだろうなと。だから幸せや豊かさの定義も、利便性や快適性を追求するような個人の豊かさだけでなくて、世の中全体の豊かさと一人ひとりの内発的な動機を同時に満たしていくような幸福観にどんどん変わっていくだろうなと思っています。

どんな新しいつながりがあると良い?

野村: ありがとうございます。社会のあり方が変わっていくと思った時に、今までSILKが作ってきたネットワークに加えて、どんな新しいつながりができるとより麗しい未来が加速すると思いますか?

前田さん: 今思っているのは、1つはソーシャルイノベーションについての見識とかノウハウをもっと言えるようになれたらいいなと思っています。どういうものがソーシャルイノベーションと呼べるのかってところで止まるんじゃなくて、ソーシャルイノベーションのやり方とかノウハウをオープンリソース化していけるような機関にしていきたいなと思っていて。

2つ目は、まだ実現までいけてないんですが、産業支援機関として、商工会議所や銀行といった昔からある支援機関と連携を取って、ソーシャルイノベーションの事業相談会ができたらいいなと考えています。

従来型の産業支援機関が得意とする法律型の支援では、支援しきれない人たちが出てきてしまうんじゃないかなと思っていて。そこに、SILKが得意とする型の決まった支援メニューを持たない支援のできる機関が参入して、一緒に組んでそのレイヤーの人たちもお手伝いできるような仕組みを作れたらいいなと思っていました。

3つ目はいまRELEASE;が旗を振って「Community based Economy」というものを始めています。「京都市地域企業宣言」を皮切りに生まれた、Community basedという価値観が京都から全国に広がりを見せているんですが、「京都から」っていうのが非常に重要だなと思っています。

コミュニティベースドエコノミーでもあるしカンパニーでもあるし。これからリビングも出てくるような気がするんですよ。まちづくり的なコミュニティベースド。京都は他と違って1000年が語れると思うんで、その豊かさを認識しながらできたらいいのかなと思っています。

前田さんのパッションの源泉はどこから?

野村: ありがとうございます。この質問はみなさんにお伺いしたいなと思って最後に聞いてるんですけど、これまでお話してくださったような活動をされてる前田さん自身の「パッションの源泉はどこにあるのか」ってお話をお伺いできればと思います。

前田さん: 僕のパッション?

野村: そうです、そうです。前田さん個人として、ただお金儲けしたい人とは違う信念でされてるわけじゃないですか。そのパッションはどこから生まれてくるのかなと。

前田さん: パッションありますか?(笑)。僕が教えてほしいくらいです。

僕って、基本すぐに人を信用しちゃうんです。だからといって騙された!みたいなこともないですけど。なんか人には誰しも良い根っこみたいなのがあると思っているんですよね。ただただ、それが発揮される世の中がいいなぁと。それを願ってるって感じですね。

野村: ありがとうございます!

前田さん: インタビューとして大丈夫ですか?これ(笑)

コーディネーターの役割と組織間コミュニケーションの難しさ

そうそう、市民協働に関して伝えたいことがあるんです。市民活動団体とか社会的な事業をやってらっしゃる企業さんとかもそうなんですけど、公益的なことやっているのに外に開いてないところが意外と多いなって感じるんです。単に人見知りなのかもしれないですけど、協力を仰ぐとかが上手じゃない。いろんな人を巻き込むような事業の設計になってないものが多いイメージがあるんですよね。

でもそれを僕は個別に相談を聞いて、どういう形で見せていくと協力を得やすいかとか共感を生みやすいかとか、そもそもあなたはこの活動で何を大事にしたいのかとか、閉じているものを開いていく作業をしているんですね。それがまちづくりアドバイザーとかSILKのコーディネーターの役割なのかもしれないですけど、その役割の人は大事な気がするんですよね。蜂でいう、花粉を運んでくるみたいな。

野村: 前田さんから見て、コーディネートのできる人たちは京都には不足してるなって思いますか?

前田さん: 最近僕ね、人間関係資本が古くなってて、老いを感じてるんですよ。U-35京都をやってて思うんですけど、会ったことない人たちがいっぱい出てくるんですよね。やっぱり身近なプレーヤーの年齢がどんどん上になってきてて。でも、僕よりも若い20代30代のプレーヤーの人たちもいっぱいいると思うんで、そこを登用してくべきやし、SILKのコーディネーターもなんなら全員やめて、2~30代の人を登用したほうがいいんちゃうかって思ったりしてます。

野村: なるほどなるほど。すごく重要ですね。ハブの人間の世代が上だと、上の人たちにばかり繋いじゃうから。ハブの人が若いと若い人と繋ぎますよね。

前田さん: 上の世代には上の世代の役割がきっとあるので。そういうのを薄々感じ始めています。

野村: 今の提言に対して福田さん何かありますか?

市民協働推進担当・福田: 今の前田さんのお話聞いていて、心当たりあるなって思いました。

前田さん: みなさん、自分の価値観を否定されるの怖いからね。なかなか開かないんですよね。

市民協働推進担当・福田: まちづくりに取り組む方々はやっぱり想いが強い方が多くいらっしゃるんですね。京都市でもお宝バンクとかやっていて、いろんな団体さんを見る機会がありますけど、似てる活動されてる方たち同士が交わるかってなったら逆に交わらないような気がするんです。やっぱり強い想いをそれぞれ持っているからこそ、考え方が違ったりして交わらないことがあったりするのかなって。そういうところを踏まえると、マッチングの難しさがあったりするのかなって思いました。

前田さん: そこで言うと、ちなみになんですけど、この団体とあの団体合わないな~ってことあるじゃないですか。でもね、代表の下の世代同士はつながるんですよ。いろんなケースがあるんですけどね。だから社長さんとか組織のリーダーの人同士を一緒にするんじゃなくて、No.2の人同士をマッチングするという手が有効かもしれません。No.2の人って番頭タイプというかうまく人間関係構築できる方が多い。また、女性のメンバーさん同士もいいかもしれないですね。

リーダーとその他のメンバーさんは、組織の中でも全然また違う役割じゃないですか。立ち上げの人はエネルギッシュで、えいや!っと立ち上がりやすいからこそ、お互いに強い人たちが戦闘に出てるからぶつかりやすいかもしれないけど、組織のフェーズが2年後3年後ってなったときに別の組織との役割分担とかコミュニケーションが必要なタイミングがきっとあって。その時に接するあっちの組織のその人はまた違うタイプかもしれないですよね。そういうふうに見立てて寄り添える人が伴走できたらいいですよね。

京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)

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